被災者の心身を癒すツアー
――今回の美容ボランティアは、地元・静岡県三島市に拠点を置く NPO法人のお手伝いというかたちで参加されたとお聞きしました。
「グラウンドワーク三島」というNPO法人が、能登半島地震の被災者に復興や再建に向けて心身を癒してもらおうと、「心を元気にするショートツアー」を企画しました。2泊3日の日程で富士山周辺の自然や温泉を満喫していただくという内容で、能登・珠洲地域の親子らを無料招待するというものです。
ツアーは川遊びなど子ども中心のプログラムなので、父兄へのアプローチも何かできないかと模索していたそうで、「肌のお手入れタイムも設けたい。ぜひ協力していただけないか」と、グラウンドワークさんから依頼を受けた株式会社フヨウサキナ顧問のかたからお声をかけていただいたのです。
実は、2011年東日本大震災後に同様のご招待ツアーが開催された際にお声をかけていただいたのが最初のご縁でした。今回、打診を受けて三島スペースのみんなに話したところ、「やらせてください!」と、9名が集まってくれました。
●スチームで肌をしっとり柔らかく。「肌も気持ちも癒された」との声が多かった
お肌のお手入れで、どんどん表情が柔らかく
――お手入れの状況やお手入れを受けた皆さんの反応はいかがでしたか。
お手入れタイムは約2時間半で計12名(男性3名、女性9名)。男性は3名とも30代のお父さん、女性は親子三代でいらした方も。エステマシン3台がフル稼働でした。
特に印象的だったのは男性のかたですね。旅館での夕食のときにツアー参加者全員の前でご挨拶させていただいたところ、「はい! 行きます!」と、3名のかたがすぐに連れ立っていらしてくださいました。 泡洗顔に「おおっ!」と声を上げ、さらにクリーナーの汚れにびっくり、「顔が白くなった!」など、とても感動してくださって。終わった後、「妻もきれいにしてもらおう」と言って、奥さんを連れてきてくれたかたもいらっしゃいました。
女性の方々も、「お風呂に入っていなかったからスチームが気持ちいい! シワの間にグングン入っていく感じ」、「肌も気持ちも癒された」等々、喜んでくださって、表情がどんどん柔らかく変わっていったような気がしました。フヨウサキナからのSサイズ化粧品6点セットも大変喜ばれました。
――お手入れのとき、何か心がけていたことはありますか。
今回、お手入れさせていただいた方々は、ふだん私たちが接しているお客様とは全く状況が異なります。まずはそのことを念頭におき、「1回だけのお手入れですけれど、楽しんでくださいね」 の気持ちを徹底厳守しました。そして、言葉で言い尽くせないほどの経験をされた方ばかりですから、私たちは余分なことは言わず、聞かず、のスタンスで、とにかく笑顔でなごやかに、楽しい雰囲気づくりを心がけました。
“美容の力”で 社会のお役に立ちたい
――初回の 3 月に続き、4 月も美容ボランティアの要請があったそうですね。一連のボランティアでどんなことを感じましたか?
4月のときは、県内の仲間(サキナビューティーラウンジ静岡)にも声をかけ、一緒に参加させていただきました。 主催者側からは、初回参加者からの口コミでお手入れコーナーの前評判が高く、夕食よりもお手入れの方を優先していたかたもいらっしゃったとお聞きして、大変ありがたく思いました。
ふだん私たちは、お客様に接するなかで「美容の力」を確信することが多いのですが、今回も改めて感じました。 特に女性はどんな大変な状況下でも、何歳でも、きれいになると気持ちがうるおい、元気も出てくるーーと痛感しました。そして、それは男性も少なからず同じような影響があるのかもしれない、と気づかされました。
一期一会のお手入れではありましたが、被災者の皆さんにとって一瞬でも心が安らぎ、復興や再建に向けての癒しになれたのであれば、私たちにとってもうれしい限りです。 微力ではありますが、これからも美容の力を通して社会のお役に立てればと思っています。
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●石川県珠洲市と能登町のこども、家族43名が参加した「心を元気にするショートツアー」
写真提供 グラウンドワーク三島